2025/04/15 18:41

近頃は春本番を迎えて、あちこちに見える花の彩りに心躍る日々ですね。外での花見もいいですが、花屋を覗いてみるのも個人的にお勧め。季節の変わり目の、取り揃えの花が一気に変わったときの喜びもまたひとしおなのです。
今回は、お部屋に花を取り入れてより春気分を味わいたい方へ、かつ個性的なフラワーベースをお探しの方へ、オランダのDeGats社の作品をお紹介したいと思います。
よろしければ、お付き合いください。
DeGats社とは
オランダの「De Gats(ダ・ガッツ)」社は、1954~55年にかけて陶芸家のHans Custers(ハンス・カスターズ)氏によって設立されました。

Door Romaine - Eigen werk, CC0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=11900526
社名である"De Gats"とは「城の路地」を通称したもので、ファルケンブルグの町に今も現存するデン・ハルダー城(要塞)の地下の五つの部屋に工房を構えたことから名づけられたと思われます。その後、2人のスタッフとともに作品を生み出し続けましたが、1983年に市当局からその場所を明け渡すよう圧力を受け、閉鎖され現在は活動をしていません。
またハンス氏は他の作家やメーカーとの交流を嫌っていたり要塞地下で作陶することを選んだりと、字面だけで見るとどことなくパーソナリティにほの暗さを感じるところがあります。
しかし、観光都市でもあるファルケンブルグ。実際には訪れる観光客のために、スタジオで花瓶やタイルの絵付けのワークショップを行うこともあったそうです。
作風とモチーフ

ハンス氏は陶器メーカーや他の陶芸家との接触を嫌い、独学であることをポリシーとして、その作風はオリジナリティーに溢れるものとなっています。カタログや作陶ノートをもたず、頭の中で作り上げられたアイデアが、そのまま作品に投影されており、平面的な画風とは裏腹に、シチュエーションを想起させる情景の切り取りが秀逸です。

オレンジの釉薬の上に、スポイトで黒の釉薬を重ねたコンテパステルのような模様。
そこから素地を削り出して行う、スグラフィートと呼ばれる技法によって行われた絵付けのモチーフは、アフリカンアートやキュビスム思考にインスパイアされており、一貫して精神世界のようなスピリチュアルな印象を受けます。


草原を駆ける馬のモチーフは、躍動感とともに荘厳な佇まいを感じさせます。馬には、「勝利」「誇り」といった象徴的意味を持ち合わせています。ふくらみのあるどっしりとしたシェイプなので、たくさんの花を力強く活けてみても様になります。


月の下で佇むフクロウ、静謐でメランコリックな印象を与えるモチーフです。フクロウは、「知恵」「幸運」を運ぶ象徴として知られています。くびれのあるシェイブで、枝垂れた植物や大ぶりの花を一輪…などメリハリのある活け方がおすすめです。


人物と植物のモチーフ。
ローリエのような葉と人物の様相から、ギリシャの双生神アポロンとアルテミスではないかと推定しています。
同社のコレクションから太陽と月を描くことが多い点を見ても、太陽神であるアポロンと月神であるアルテミスであることは想像しやすいのですが、真意は定かではありません。是非はともかく神秘的な作品です。
象徴的モチーフに込められた真意を推し量ってみる

決してメジャーではないオランダの陶芸品や陶芸作家。
その中でもご多分に洩れないDeGats社ですが、作品は作家性の強いワン&オンリーなアイテムがそろっています。それぞれの象徴的なモチーフに込められた真意を、あなたなりの解釈でお楽しみください。あるいは、あなた自身の心象風景を想起させるきっかけに。そうなれば、嬉しい限りです。